棚卸しでつかまえて

「いや、6日までに仕上げないといけないんです」

とある現場で私は携帯を握る手に力を込めてこう言っていました。

「岩倉君、6日までにここのタイル仕上げてよ」

非常にお世話になっている監督さんからの依頼、これは絶対なのです。現場は突貫、材料が足りないとの理由で遅延などもってのほか。そう、「もっての他」

着々と進む現場、納期を目前に現場を必死に収めてくれる弊社の技術者達。電卓とスケールを持ってタイルを張らなければならない範囲と残りのタイル材料を照らし合わせる私。ダンプが入ってくる、次は違う業者が荷下ろしにくる。現場の空気は休息を許さず進んでいく。現場監督の携帯は甲から乙へ、鳴り止まず。 

そして私は手に持つ電卓のイコールボタンを押した瞬間、硬直するのでした。

「材料、足りひんやんけ」

関西に無縁の私はこうつぶやきました。

この日、日付は4日、まだ午前中である。すぐに注文すれば中一日で6日には着く!いける!

私は電卓を投げ出し、電話を手に材料手配をしました。

「3ケース今日発送してください」。余裕のはずであったんです。余裕の。

しかし代理店からの返事は思わぬものでした。

「メーカーが新年度ということで棚卸しになっているんです。その期間中は発送を全てストップしているようでして・・・」

こういうのって重なるんですよね、現場も20日までの納期であったはずが、オーナー様のご気分で6日が納期になってしまっていたのです。悪いことって重なります。もうね、目の前真っ暗ですよ。

「じゃあ、いつ発送できるんです」私はすぐに訊き返しました。

「どんなに早くても6日発送ということです」代理店の方は申し訳なさそうにそう答えてくれました。

「いや、6日までに仕上げないといけないんです!!!」

代理店との電話も短く、私はメーカーに直接電話することに。そこで対応いただいた方に事情を説明し、どうにか発送できないかと交渉するも「私、電話番なんです、だからそういう話も上に伝えられなくて・・・お気持ちは察しますが・・・」私は思いました「この役立たず!」。自分の数量拾い出しが甘かったことを棚に上げ他人に八つ当たりするという、正にゴミの思考。

「だからケチらずに多目に発注しておけば良かったんだ!」と自戒。しかし、材料を余らせるのもこれまた重罪。難しいんです。こういう職種って・・・

そしてどうしたか。技術者に材料が足りないことを伝えるも「え?!マジでや!?」とだけ言い、何とか道路との設置面の張り方を工夫し、もう少し貼り伸ばせるように懇願。

奇跡的に材料が足りたのです!私が電卓を持って図るとき、このような突貫の現場では大抵四捨五入するので、弾いた数量が多目になっていたのも功を奏しました。

 

いやぁ。この職人さんでなかったら多分とんでもないことになっていました・・・いつもありがとうございます。